2013年06月12日

後輩書記とセンパイ会計Tribute 燃える塵戦記 1st burn 新米図書委員と塵塚怪王、電子の恋文に悶える(6)

 前回までの『燃える塵戦記』目次はこちら

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 Deep Sky 01

 例えば、私の考えている事を
 例えば、この気持ちを

 そっくりそのまま貴方の元へ
 届け、感じさせる事ができたなら

 貴方はあたしのその思いの深さに、
 心震わせ感動し、すぐにも会いに来てくれる事でしょう

 なのにどうしてもできない
 なのにどうしても勇気がない

 ねえ、女の子から声をかけるのなんて
 ルール違反なのは知ってるでしょう?

 だからきっと話しかけてきてくれる
 そう想っていたけれど

 この気持ち、知ってか知らずか
 貴方は無関心のふり

 この気持ちを伝える唯一の手段は
 文章で伝える以外に他はない

 だからあたしは今日も送る
 だからあたしは明日も送る

 空を見上げて、自分を信じて


 Deep Sky 02

 私はA子。
 直接メインのストーリーに関係ないからって、適当に名前を設定された、私はA子。
 それじゃあんまりだから、「A」は「あ」とも読めるし、「あこ」って名前にしてしまおう。
 私は、あこ。
 高校2年生。どこにでもいる平凡な女の子だ。
 でも、実際「どこにでもいる」「平凡な」人間なんて、きっと存在しない。良く知りもしないで、きっと頭の情報処理能力に問題があるのかな、そういう良く知りもしない人間の事を人は案外、「どこにでもいる」「平凡な」っていうカテゴリーに置いてきぼりにしちゃって、考えないようにしちゃう癖がある。
 知り合ってみたら案外、……例えばそうね、子供の頃ネズミに耳を噛まれた経験があるとか、面白い話を持ってる女の子だったりする事もある。
 え? 私?
 私は違う。
 それは私のエピソードじゃなくて、別の女の子のもの。
 私はあなたの頭の中のある「どこにでもいる」「平凡な」女の子だ。そういう概念をそのまま、「A子」の「あこ」に押し付けてもらって構わない。
 それが、私に与えられた設定なのだから。
 この年代の女の子は、実に多感だ。未だ様子見か慣れていない一年生でもなければ、進学か就職かで揺れる三年生にもちょっと遠い。高校二年生は、ある意味青春の中心に位置する特別な時間なんだ。
 その特別な時間、私はどうやら、恋に夢中という設定らしい。
 私には好きな人がいて、彼は私に振り向いてくれない。
 彼はどういう人かって? それも好きに決めちゃっていい。サッカー部とか、バスケ部とか、そういうところで活躍してるようなスポーツマンタイプの爽やか男子でも、どこか陰のある猫っ毛優等生タイプでも、あなたが好きだと思う人を私も好きだと思ってくれて、それで間違いはない。
 問題はそんなところにはないのだから。
 肝心なのは、私が例えば誰かの友達だったり、他の学校の生徒だったり、遠い親戚の子だったり、確かにあなたの身の回りにいる「誰か」で、それでいてそんな子が、「誰か」を好きだって思ってる。ここ部分だけ今は押さえておいてくれたら、ディティールは対して重要じゃない。
 私、あこは今、恋をしています。
 実りそうもない、少し無理目の高望みをして、いつか叶う事を夢見ています。
 そんなある日の事でした。
 スマホに一通のメールが届くんです。差出人は、知らないアドレス。身に覚えはないけれど、タイトルが目を引きます。私に届いたタイトルは、きっとあなたに見せても、心に響くものではないでしょう。でも、私には響くんです。そのタイトル、その言葉のチョイスは、私の心の揺らぎを敏感にとらえた、とても心地の良い悪魔の囁き。
「イタズラかしら」
 そういう不審の気持ちも起きない訳ではないけれど、それでもやっぱりタイトルに惹かれて私はそのメールを開けるわけにはいかなくなってしまう。
 私の場合はね、恋をしてる設定だから、

【恋に効くおまじない】

【このメールで相手が振り向く】

【あなたの気持ちがきっと届く】

 こういう陳腐なものが届いた事にしちゃっていい。カジノのルーレット。当たりはひとつ。どこに球が入るかは分からない。私の心の隙間に球が入るなんて確率、それと同じぐらい難しい。でもそこにコロンと入ってしまったら、どんな陳腐な言葉も表現も、脊髄に電流を流し、脳漿に波紋を広げるぐらいの衝撃になる。まさしくビンゴ!
 開封すると、中には大体決まった文句。

『あなたがもしも恋をしていて、
 その恋を実らせたいなら、
 空メールを送ってね。

 愛の伝道師・恋愛アドバイザーのシスター・フグルマが
 明日彼に送るべきメールと、
 その後のあなたのとるべき行動を送ってあげる。

 ゴミのような恋愛よりも、
 燃えるような恋をしたい
 そんなあなたの、私は味方』

 感電してる私の脳は、疑いようもしない。この世に存在しない、暗黒魔界に届くかもしれない空メールを送信してしまう。
 しばらくすると、返事はすぐに届く。
 メールにはこう書かれている。

『あなたの思いを素直に伝えなさい。

 【あなたが好きです。】

 先ずはこのメールを、
 名前を知らせずに送るのです。

 そうして、24時間、あなたは何をしてもいけません。
 普通に接して、メールを送った話を誰にしてもダメ。
 それができたら、次の指示をメールするわ』

 私はドキドキ、胸高鳴って、変にそれでうまくいくような気になって、言われたとおりにメールする。
 それが、地獄の片道切符である事も知らずに……。

  (つづく) 

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【改造人間・高橋京希、今回の獲得経験値】
 Lv1 肉体力:0(通算9P)
 Lv2 精神力:+1(通算24P)
 Lv1 容姿力:0(通算6P)
 Lv4 知識力:0(通算47P)
 Lv1 ヒーロー力:0(通算9P)
 Lv5 趣味力:+0(通算181P)

posted by きょうきりん at 14:51| Comment(0) | 小説・詩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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